心の支え
厨房で
ちょっといやな瞬間もあるけど
ときどき訪れる、ちょっと嬉しい瞬間もある。
いやな瞬間というのはたいてい道産子女性たちからの一方的な指示の中で発生することが多く、
まぁ最近は、ぐっと受け止めずにできるだけ『はいはい』と素直に返事はして、気にしないようにはしてる。
そして嬉しい瞬間というのはたいてい板さんたちからの指示があったとき。
こないだは板さんAから
『地を6、1、1、で作っておいて。あと、小松菜あおっといて。』とあたしが任された。
言われたとおりにやっただけだけど、
いつものエビ殻むき作業以外に、板さんのほうの作業の仕込みを”自分に任せてもらえた”ということが、なにより嬉しかった。
今日は
板さんBから、
『刺身盛って』と一式渡されて、3人前自分で盛らせてもらった。
お客さんに出す前に、店長にも目を通してもらって
ぼたんえびを盛る角度を微妙に手直ししてもらって
そしてお客さんのところに運んでもらった。
ただそれだけのことだけど
”刺身盛りを自分に任せてもらえた”ことが
ほんとに嬉しかった。
『今度、刺身の本かなにか見てごらん。たいていパターンがあるから。』
『これまでどこかで刺身はやったか?まぐろはひけるか?スジのある側ない側のひき方とかは知ってるか?』
やってません。ほとんどわかってません。
『よし、わかった。』
次のなにかの機会に、1から教えてくれそうな雰囲気。
こういうときはヘタに中途半端に知ったような振りしないほうが、板さんたちはきちんと一から教えてくれる事を
あたしは知ってる。
こうしてひとつずつ板さんたちから教えてもらって作業のひとつひとつを自分に任せてもらえることで
完全裏方の厨房からどんどん表舞台の板場のほうに近づいていける気がする。
今日は
冷蔵庫に誰かの買い置きの鶏肉と豚肉があって
『そこにあるのでまかないなにか作って』と言われて
とっさに思いついたのは唐揚げ。
だから鶏肉の一部使って唐揚げ作って、あとは好みでかけてもらおうと、ネギ入りの甘酢ダレを横においといた。
鶏肉と豚肉を使ってぱぱっと作るレパートリーを増やしとけば
まかない作りもそんなに負担にならないんだな。だいぶわかってきた。