自分のうつわ
こないだゲージツサークルで、
もうひとりのお母さんと一緒にシャドーボックスの指導役をした。
彼女は昔、知り合いのお母さん友達からシャドーボックスを教えてもらって、それが趣味になり、
そのうち教えるようになって、いまやカルチャーセンターなどでも教えるセンセになってる。
特に資格というものはとってないとのこと。駅の一角の無料スペースで自分と生徒さんの作品展はやったことはあるけど
個展は開いたことはないらしい。
けど長年自信をもってされてるのでセンセとしての貫禄は抜群だ。
あたしはというと、
アメリカで教えてもらって基本の資格をもってる。なにげに個展も2度開いてしまい、去年は値段つけたら売れてしまった。
気がつけば、募集はかけてないのにうちに通って来る生徒さんができてて、定期的に教えたりも。
それなのにはっきり言ってセンセとしての貫禄は0だ。貫禄というか自覚というか、自信というか。
こないだの生徒さんは総勢18名。制作時間はたったの2時間ということで、
あたしが用意した初心者でも大丈夫そうな絵柄のカードと、彼女が用意した少しこまかめの
中級者用カード、どちらか好きなほう選んでもらってやりましょう、ということにしたら、きれいに9名ずつ分かれた。
ので、
9名ずつ担当して教えることにした。
日頃、ほぼマンツーマンで教えてばかりのあたしにとって、9名相手となるとちょっとハイテンション。
だけど、時間内に完成させてあげたい思いで、
わかりやすく、とりかかりやすく、多少の失敗は気にしなくても平気、と安心させながら、
切ったらとにかくパーツを土台に貼ってく方法で進めていった。
「ここ切りすぎたかなぁ」と言われれば「だいじょぶだいじょぶ!」
「丸み、センセみたいにうまく丸くつけられない」と言われれば「自分のセンスでやれればいいから、このとおりじゃなくてもだいじょぶだいじょぶ!」
ま、その進め方は完全に大雑把な『あたし流』だったけど、1時間半後、全員完成した。
よかった〜出来たーとほっとした顔でみんな和やかにお茶休憩に入った。娘にプレゼントしよう〜とか言ってる方もいたり。
で、向こうはどうなったかな?と
彼女の方の様子を見に行くと...。
出来上がってないどころか、みな、必死でパーツ全部切ってた。細かすぎてふと教室に吹き込んだ風に
「あー、クマの顔、どっか飛んでった〜」床をのぞきこんで探してる。
どうしてこんなことに??とすみっこの席で困り顔だった生徒さんの様子を見に行ったら
「このあと、どうすればいいの?」と聞いてきた。なので「どこまでやった?」と聞けば「なんかよくわかんない」と。
手順の紙を見たが、あたしにもちょっとよくわからなかった。
どうやら、作る手順があたしと彼女ではまったくちがい、彼女はまず全部切らせて、それからパーツのところどころを完成させて
それから土台にのっけていくやり方、
おそらく『彼女流』、おそらく彼女が習って長年ずっとそれでやってきた『友人流』で進めてて、
手順の紙もそういうわけで、わかりづらい表示になってて、
なおさら初心者にとっては今自分がどこをやってるんだかわかんなくさせてたようだった。いくつかこなしてる人ならそういう作業はよくあるけど、初心者にはキビシイかもなぁ。
切ったパーツを前に途方にくれて「どうにかしてほしい」とその人に頼まれ、彼女には悪いと思ったけど、
「とにかくじゃあ貼っていこうか」とまずこれ貼って〜次にこれ貼っちゃって〜と、その人の作品をとにかく完成させて持ち帰らせてあげないとと、陰でこっそりあたし流で指導してとっとと完成させてあげた。
「よかったー!できた〜!」ほっとして喜んでる様子にあたしもほっとしたが、このときあたしは、
同じシャドーボックスをやるセンセ同士でも、やり方や使う材料からして人それぞれこだわりがあるもんだなぁと実感した。
あたしはあたしのやり方、彼女は彼女のやり方で、きっと今後も崩せないだろう。長年そのやり方で通してきてるからなぁ。
そしてどれだけたくさん作品完成させても、作品が売れても、
あたしはあいかわらずセンセとしての貫禄は育たず、
大勢を前にして『はい、こうしてくださいね〜!』と彼女のように堂々と呼びかけられるような先生にはなれず、
生徒ひとりひとりのところでこそこそと
「そこねー、あとでどうにか隠れるからだいじょぶだいじょぶ」とか言ってるマンツーマンセンセのままなんだろな。
黙々と作るのは好きだけどね〜大勢の前で自信もって指導できるその能力が大きく欠けてるんだよなぁ。
こういうのもすべて慣れなのかなぁ。小心者だからなぁ。